世界との往き来難(がた)かる世はつづき
窓開く日を偏(ひとへ)に願ふ


華子さま
幼子は新幹線の窓に立ち振りむきもせず川ながめゐる
(背景)華子さまには、地方にお成りになった折に、乗車された新幹線で、小さな子供が窓際に手で掴まり、熱心に富士山の雄大な景色や川に集う鳥たちを眺めていた姿を思い出され、このお歌を詠まれました。
信子さま
成人を姫宮むかへ通学にかよふ車窓の姿まぶしむ
(背景)信子さまには、愛子さまを、ご幼少時より深い敬意と愛情を持って見守ってこられました。昨年、愛子さまにおかれましてはご成年を迎えられ、信子さまのお喜びは誠に大きいものであります。ご立派に成長された愛子さまには、これまでにも増して、より一層学問に邁進されておられます。 ご通学のため、お車にてお住まいの御所を颯爽と御発になる際の、お髪も綺麗に整われて健やかな愛子さまのご様子を車窓越しにご覧になった信子さまのご心境をお詠みになったお歌です。
彬子さま
蛍光灯映る窓辺に思ひだす大正帝の蛍雪の苦を
(背景)大正天皇の御製に、「修身習学在文園 新固宜知故亦温 勿忘古人蛍雪苦 映窓燈火郭西村」とお詠みになり、学習院の学生にお示しになった漢詩があります。彬子さまが研究室で仕事をされていた折、ふと窓の外をご覧になると、もうすっかり日が暮れていて、窓に蛍光灯が映っていたので、この御製を思い出されてお詠みになりました。
久子さま
車窓より眺むる能登の広き海よせくる波は雪降らしめつ
(背景)車の窓からご覧になった能登の海と雪が降っている寒々とした情景をお詠みになったお歌です。
-------- おまけ
昭和34年歌会始 お題「窓」
皇后陛下の御歌は、香淳皇后さまの詠みぶりに似ているような気がします。